地味子の秘密*番外編*
コイツの言うことの意味がわからなくて、首を横に傾げる。


すると、杏は傍に置いていた学園用のカバンを引き寄せた。


なにしてんだ?

じっと見つめていると―――……

「陸、はい」

A4サイズくらいのファイルが入りそうな薄い紙袋を差し出される。


「へ?杏?」

「ハッピーバレンタインなんだけど?」

「え……」

マ……ジ?

もうもらえないと思っていたから、ビックリ。


「なんでそんなに驚いてるの?あ、もしかして……あたしがあげないとか思ってた?」

「あぁ……」

「バカ。本命にあげないでどうするの?ちゃんと、準備してたってば……」


クスクスと笑う杏から、紙袋を受け取った。

中を覗くと、薄くて長方形の箱がひとつあり……もうひとつ、小さな箱が入っている。

「開けてもいい?」

「どうぞ」

ニコッと微笑まれ、まずは小さな箱の方から包み紙を解いていくことにした。



中に入っていたのは……


「マカロン?」

ハートの形をしたチョコ色のマカロン。


「うん。チョコと、コーヒーのね」

隣から、杏が説明してくれる。


ひとつ口に入れると、チョコバージョンだった。

はさんであるチョコは、ビターで、甘いものが嫌いな俺用に作ってある。

もうひとつ食べると、今度はコーヒーバージョン。

はさんであるのはチョコではあるが、コーヒーのリキュールが入っていた。

どちらも、甘さは控えめ。


杏が俺の好みに合わせて作ってくれたことは、一目瞭然だ。


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