シンデレラ・セル
「死ね」
そう言って早希は私を突き飛ばした。それはもう、強く強く。土が頬に飛ぶ。視界には早希の足元。あぁ私は転げたのか、と思った頃には顔を早希の靴で蹴られていた。容赦のない勢いだった。
「お前…五月蝿い」
「…っ、最低。アンタ最低だ」
頬の汚れを拭いながら早希を睨み上げてやった。何の意味もなかったけれど、私の気が済まなかった。
「もう一度言ってみろよ」
「…もう良い。二度と話し掛けないでよね」
私はスカートの汚れは放っておいて踵を返した。何処に、だろう。私は心の何処かで実は不安を抱いていたのかも知れなかった。あんなこと暴露されて、私は彼にこれ以上の口止めもせずに喧嘩だ。どうにもならない訳がない。あぁ嫌だ。
でもどうしても私は何か言い返してやりたかったらしい。足を止めて振り返って早希の目を見据える。
「…アンタが、死ねばいい」
小学生でも近頃使わないような言い返しで私は気は済まないが、頭に血が上っていたのだろう。早希をそのままに私はまた踵を返して教室へと急いだ。