シンデレラ・セル

 友達なんて居ない。
 存在意義なんて無い。


 私が彼処に居る意味なんて、元より無かった。



「…だけど───…っ」

 教室なんて着く前に私は足が立たなくなってその場にしゃがみ込んだ。初めてだった。こんなに足が震えたのは。
 怖いのだろうか。違う。きっとあの綺麗なひとの内部が黒塗りだという事実に胸が高鳴ったのだ。あぁ、死んでしまえば良いのに、あんなに綺麗なひと。

「あはは…っ、」

 何が可笑しいのだろう。判らなかった。壊れてしまいたかった。壊されてしまいたかった。痛かった。私の何処かがちくりちくり、痛みを訴えていた。私はまた自嘲するかのように笑った。

「五 月 蝿 い !!!!!!!!」




 わたしの声が私を怒鳴って、わたしの右腕に握られたカッターが私の左手首を傷付けた。もう一度、凶器を横に引く。その刃物は私の制服の胸ポケットに入れられていた。それは中学生のブレザーにもこの高校のセーラー服にも共通したイレモノだったからだ。

「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い…っアンタが死なないから!アンタが死なないから人間を困らせるんだよ!」

 カシャン、なんて軽い音がしてその文房具はコンクリートに落とされた。転がる。

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