シンデレラ・セル
私はそれが転がった先をぼうっと見ながら、後ろにあった空気がじゃり、という靴音と共に消えたのを感じた。あぁ誰かに見られたんだなぁ、と。
私は、目を瞑る。
どうでもいいと言ってはいたけれど、私は心の何処かでマトモな高校生活を望んでいたのかも知れない。本当にどうでもよかったのならきっとあの時食堂へなんか行かなかっただろう。
「……」
甘い人間だと思った。そう簡単に人生が変わる訳もないのに、期待だけは抱いて。甘い。そんなのって馬鹿馬鹿しい、と思う。
ふと遠くから呼吸音が近付いているのに気付いた。私は振り返る前に此処から逃げようと覚束無いまま立ち上がって、一歩踏み出した。
左側──肩。
掴まれて、息を詰めた。
「や…、はなして…」
私は目を堅く瞑って首を振り続けた。怖かった。先程までの威勢なんて、虚栄心からの産物だったのだ。