シンデレラ・セル
私は両性愛者であった。しかしどうにも男性のことを信頼出来ず、女性に身体を売った。動機なんてない。お金が欲しいなんてものはただの口実であって正式な理由にはなり得ないのだ。
そして何故今日別れ話──と呼んでいいのか…──になったのか、その理由もはっきりと理解は出来ていなかった。
しかしながら私は何処かほっと安堵したような不思議な気分にあって、さっさと家路につきながら空を見上げてやった。
別段綺麗でもなんでもないいつもの空だった。が、それも今までの私にとって眩しい存在であったから、たとえ汚い過去を抱えていようとこの空にも風にも、公園で遊ぶ子供にも罪悪感を抱かなくても良いのだ、なんて考えた。
そう、幸せ。
これから存在意義を探そうなんて明るく考えてみて、私は晴れやかな気持ちで汚れた自分を忘れようと思った。一年半の売春行為を忘却の彼方へ追いやろうと思った。
シンデレラ・セル
第一章 タブー