シンデレラ・セル
「如何して私なんか、」
私は其処で情けなくも声が詰まってしまった。何故か口に出して言うと自分が一人だという事実は意外にも苦しいことなのだと気が付いた。そう、少し切なくなった。
「友達の一人がさ、笹川連れてこいって言うから俺が連れに来たんだけど、やっぱ迷惑だった?」
「…迷惑、ではないけど」
私はフイと彼から顔を背けた。何だか眩しかった。もう払拭した筈の汚さをまた自覚した。首を振ってから見上げると、彼はそっかぁと笑って早足になる。不思議なひとだと私は感じた。
「…名前、教えて」
「あれ、知ってると思ったんだけどな!俺ね、結城直哉、」
直哉で良いけどな、なんて優しく言って直哉は学食の扉を開いた。私は、実のところ学校見学にも来たことは無かった。だから学食なんて所、初めて見たのだった。別に施設自体は大したこと無かったけれど。
「おーい、笹川連れてきた!」
私が顔を出すと、其処には優しさなんて欠片も感じさせないような“高校生”たちが居た。私を物珍しそうにニヤニヤと眺め、口々に何かを言い笑いあっていた。私の大嫌いな“ニンゲン”の顔だった。