シンデレラ・セル

 私は、瞬きすら出来なかった。驚きではなく、緊張だ。私はこんなに沢山の人間に見つめられたことなど無かった。あったとしても避けてきた。





「…………え…?」


 私がやっと声を発した時、さっきの彼(暴露をした少年だ)がそれはもう楽しそうに近付いて来て、私の腕を引いた。強い力だった。

 そのままターン、呆然としたまま私は足を縺れさせながら走らされた。つまり、その場から連れ去られたのだ。










「はな、し…て」

 私は元より体力なんて無かった。だから拒絶も、不平も、殆んど言えずにただ走った。腕は掴まれたままで。

 しかし何故だか唐突に怖くなった。この人は何で私のことを知っているのだろう、今から私に何が起こるのだろう、得てして私はこれからの高校生活の中身なんて考えなかった。どうでもいいものだから。





 私は無理矢理その場に立ち止まった。体育館や副校舎が見えていた。ああ美術室だ、などと思いながら私は目の前のそいつの錘の様に全体重を後ろに掛けた。


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