シンデレラ・セル

「俺の名前判る?」

「さあ」

 即答した私、
 苦笑した彼、

 私は腕を組んでそいつを見上げてやる。無表情で。

「早希。」

「…サキ?女みたいな名前」

 ニコリとも笑わずに私が言ってやると早希は私の肩に力を入れた。普通に痛かった。

「…女に言われたくねーよ」

「あっそ。私は可愛い名前だねとかそんなつもりで言った訳じゃないから…言ってしまえば、」

 口角が上がるのを私は隠せなかった。私、今、厭な人間だ。

「ダサい名前」



 言い切った瞬間視界に火花が散った、様な気がした。信じられない。今まさかこいつは女を殴った、のだろうか。私という、女を。


「な、に……っ」

「女だからって調子乗ってんじゃねーよブス」

 これだから、これだから人間は嫌いだ。明らかに可笑しいではないか。展開が。咳き込んで、私が顔を上げた先には綺麗で涼しい顔をして手の汚れを払う早希の姿があった。嫌いだ、嫌いだ。

「アンタさ…」

「立場考えろよな、お前」

 立場?
 私は口元を弛めた。何故って、早希は私に焦って焦って、秘密を守れと言われたいのだろう。


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