辛いくらいに君が好き
「なんだー、出かけちゃうのかー…残念」
舞は残念そうな顔をして俯いた。
ほんの少しの沈黙の後…何か閃いたように顔をあげた。
「こんな時間にどこに出かける用でもあるの?――――もしかして、彼氏?」
ニヤニヤと笑みを浮かべた舞は、黙っているあたしに続けた。
「あら?否定しないんだ?ってことは、本当にできちゃった?で、これから2人で愛を深め合う、なんて?」
…呆れて何も言えない。
舞はわかっているはずなのに。
今のあたしには冗談を冗談で返すことなんて、笑って冗談を受け流せる余裕なんてないって。
声も発せず、睨み付けるように舞を見た。
「……ごめんごめん、からかっちゃった。…どこに行くの?もう遅い時間だけど?」
「ちょっと…高校に行こうと思って…」
「高校?……どうして?」
もう…あたしも舞もちゃんと仕事に就いて、“大人”と呼ばれる存在になった。
…中身はまだまだ子供なのだけれど。
そんな“大人”が高校に行くのは、やっぱりおかしいのだろうか?
…でも、行かなければいけない理由がある。
理由がある以上…行かないわけにはいかない。