おちます、あなたに
あぁ、ばかやろう。数分前の自分。
どちらにせよ自分を責めることに変わりはないくせに、心の中で言わざるを得なかった。
私の方に傾けられた傘。
折り畳みのせいか取っ手が短くて、一回り小さい。
先輩に濡れますよ、と言えば。
悠ちゃんが濡れなかったらいいんだ、と返ってきて。
心臓は、よく耐えてくれていると思った。
いきなりの急接近。
心の距離の前に、この相合傘。
緊張しないほうが無理だ。
「……先輩、雨好きですか?」
なんとか勇気を振り絞って出た会話は、ありきたりな天気の話。
だって仕方がないじゃないか。
今までこんなに近くで会話をしたことも、完璧に二人になったこともないんだから。
「ん〜、嫌いじゃないけど。俺はやっぱり晴れの方が好きかな」
うん。
先輩には晴れが、太陽が似合います。