おちます、あなたに


「悠ちゃん、今日は全然話さないね」

 幾度となしに波打つ腹痛に気を取られていた時だった。

 心配そうな先輩の声音。
腹痛に緊張。いつも通りの会話がなにか思い出せない。

 たくさん話したいことがあるのに。


「すみません、ちょっとしんどくて」

 言うが早いか、先輩は立ち止まり、私の顔を覗き込んでくる。

「あ〜確かに顔色悪いね。気付かなくてごめん……ゆっくり帰ろっか」

 先輩は照れた様子もなく、ただ心配して私をみてくれた。
だけ、なのに。うれしいと感じてしまう私の心。
ごめんなさい、先輩。


 人通りが多い道に出た。
カラフルな傘が、交差し合う。
傘のせいか、行き交う人々で窮屈だ。
 私を気遣う、スローペース。
安心しきっていた。


肩に誰かがぶつかるまでは。


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