おちます、あなたに
無事に改札まで着いた私たち。自然に離れていった手が、今の私たち。
ベンチに座って壁にもたれる。
ひんやりしていて、気持ち良かった。
「──あ、もしもし。もう学校でた?」
視界の中央で、先輩が電話を掛けている。
「お、ならもう少しかー。なるべく早く改札まで来てくれ──え? もう着いた?」
「──体調が悪いなら保健室で休でおけばよかったんだ」
私の隣に影が差し、頭に微かな重み。
お兄ちゃんが、軽く息を乱してそこに立っていた。
「将樹悪いな、後は俺が連れて帰るから」
「うん! 悠ちゃん、最後まで送ってあげられなくてごめんね。俺今日バイト入ってて……」
「いえ。将樹先輩ありがとうございました」
先輩が時計を気にしていたのはそのせいだったんだ。
私たちが乗る電車とは反対のホームへ向かう先輩をみて、もう一度感謝の言葉をつぶやいた。
お兄ちゃんがまた私の頭を撫でた。