Myprince
* 1 *
恋に落ちたら止まらない。
そんな恋だった。
あたしは1つ上で同じ陸上部のキャプテンに恋をした。
やさしくてかっこよくて可愛くて、そして俺様で―
全部が大好きだった。
あたしは彼を'王子'と呼ぶ――
それは運命の8月の暑い日だった。
顔がブスってのと歯が出っ歯なので小学校から男女ともにいじめられてたあたしは男子が嫌いだった。
中学には行って変わった。
友達もできた。
毎日が楽しい。
そんなあたしに恋なんか入る隙間もなかった。
かっこいいなんて思った事もなかった君をこんなに好きになった。
「ゆずーっチーム一緒だね」
今日は部内記録会。いくつかのチームに別れて実力をはかる。
美代と同じチームになった。
中宮陽キャプテンも同じチーム。
好きじゃないけどなんだか嬉しかった。
しゃべったこともなかったけど嬉しかった。
「柚希ってさ壁に好きなアイドルのポスター貼ってキスしてるんだってさ。おもしろくない?」
「大野まじで?」
いきなり山田先輩があたしの恥ずかしい事を言う。
「まじです…」
「まじ?超うけるーっ!」
キャプテンが爆笑してる。
こんなに目を見て話してくれる人は初めてでなんかドキドキした。
みんな男子と仲良くしはじめてて、あたしだけ時間は小学校3年生のままで止まってた。
だからこんなに嬉しいんだ
だからこんなにドキドキするんだそう思ってた。
彼の身長は高飛びのバーで自分ではかってて175㎝もあった。
あたしの好きなアイドルなんかよりずーと高い。
だから嬉しくなっちゃってその身長の差をはかる。
「美代ーっ身長はかってーっ!」
精一杯の照れ隠しなのに。
あなたがこんなにやさしいから惚れちゃったのかもね。
「えーと154㎝」
中宮先輩の低い声があたしの真上で聞こえる。
こんなに近く男子と話したのははじめてだった。
「…ありがと」
あたしは赤い顔で返事して美代が「そんなにアイドル好き?」って。
違うんだよな。中宮先輩…なんだよ。好きになっちゃったんだよ。
あたしがこんなに好きになったのは初めて。
いつかきっと届けてみせる。
この想い届け。