切恋
  翼からの急な誘いを断る事も出来ず、あたしは涙を拭いて、蒸し暑い外に出た。








    「おぉ。急に、ゴメン」申し訳なさそうに翼は頭に手をやって、掻いてみせる。


 「ぅぅん。あたしこそ、急に帰ってゴメンね?ぁのぉ・・・」自然と、スカートを持つ手が震える。   あたしは、嫌われちゃったかもしれない。

 急に怒って帰って、おまけに、翼の大事な彼女に『馬鹿』なんて言ったんだから・・・。     「俺さ、お前に話したいんだ。全部を」

   真剣な面持ちの翼は、あたしを真っ直ぐに見つめ、そう1言呟いた。


 「ぇ?」全部?翼の・・・全部??

     「ぅん?聞く。聞くよ、翼の事、全部ぜんぶ」
   ニコッと笑って翼に言うと、「ありがとな」翼も笑って答えた。



      あたしは、翼の全てを知って、それが、どんなに壮絶な過去でも、受け入れるよ?
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