切恋
「ただいまぁ」玄関のドアを開けて、あたしは倒れこむように床に崩れ落ちた。
「あ、お帰りなさい♪愛望、そう言えば、今さっき翼くんが来てたわよ?」
リビングから呑気な声で1言いったお母さん。
「えぇっ!?」嘘ぉ! 翼が?「お母さんっ!あたしちょっと行って来る!」
制服のポケットの中に入れてある携帯を走りながら開く。
≪もしもし?翼ぁ?今どこにいる?≫はやまる気持をどうにか抑え込んで、あたしは
息を切らしながら言う。
≪やっと、帰ったんだな。俺の家だよ≫柔らかく答える翼だけど・・・。
翼の家に来い、って意味だよねっ!?
だって、だって、そう言う意味だもんねっ!!
翼の家・・・。
確か、中学の時、1度だけお邪魔させてもらつたと思う。
あたしの家からそう遠くはない。
額に滲む汗。
高鳴る鼓動を抱えながら、あたしは翼の家をひたすら目指した。