cherry
昼休み。

あたしは、屋上に瞬を呼び出した。

「咲良、急にどうした?」

瞬が笑顔で話しかける。

「あのさ、あたし・・・瞬のこと好きだよ。大切な人なの。拓也と付き合ったって、それはずっと変わらないから!」

言い終えると、もやもやしていた気分がすーっと抜けて、すっきりした。

「咲良・・・」

瞬があたしを抱きしめた。

「えっ、ちょ!瞬!」

いきなりのことで、パニック状態だった。

「1分だけ!ごめん・・・1分だけだから、こうさせて・・・?」

震える声で言う瞬に、嫌とも言えず、そのままずっと瞬を抱きしめていた。

その場面を、誰かに見られていたなんて・・・

この時のあたしは、知るよしもなかったんだ―。




< 205 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop