下僕主とツンデレ超えた召喚物


「どうりで……、魔術師かと聞いてきたわけだ。ずいぶんと優しいものだ、俺が魔術師と知るなり逃げろと言ってくれるのだから」


指の動きは止まったままだが、人差し指と中指は立てたままのラグナ。


魔術が効かないだなんて、最悪な場面だが――それすらも奴は。


「まったくもって、やりづらい。これでは、手加減しなければならないな」


余裕げに、言ってみせた。


ぞわ、と空気が固まったのは誰かの怒りか。


獣全てが憤ったようで、獣を統べる主さえも。


「どこまでも舐めくさりおって……!もう話せぬように首を食いちぎろうか!――真ん中!」


獣の一匹、白と黒が混ざった毛並みの奴が動く。


飛びかかってきたのだ。

牙をむき出しに、よだれをだらだら流した大顎をラグナに向けて――


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