霊務2
【十年前の真実ー7】




しばし沈黙が続く。






少ししてから、
藤原は小さく言葉を
かけた。







「…このまま
戻られない
おつもりですか…」






すると、
その問いには
ヨネさんは答えた。






「もう……
辞表を出した身だよ…

私は…戻らないよ…」







「………」







再び静かに沈黙になる。







こうやって
ゆっくり時間をかけ、
藤原はヨネさんを
説得しようと
する為である。







「何故…お辞めに…?」








ゆっくりと…

テンポよく聞く。







すると…

そのまま自然と、
本心を語り初めてくれた。







「私は……

社長の卑劣な考えを
見抜けず、
三山さんを自殺に
追いやってしまった…

私が殺してしまった
ようなもんだ…

更に、
会社を守るものとはいえ
記者にあんな嘘を…」







ヨネさんは、
三山の自殺を
事故死にしてしまった
事を、

ずっと気にしていたのだ。







「副社長…
それは副社長のせいでは
ありません…」







「藤原さん…

副社長なんて
止めておくれ。

私はもう副社長でも
何でもないんだから…」







もう完全にヨネさんは、
会社に戻る気は
ないようである。






ザザーン……







波の音が
静かにも荒々しく
鳴り響く。







遠くの夕日を眺め、
いつまでもここで
ボウッとしたい気持ちに
させる。







だけど、
いつまでもここに
居られないのは
分かっていた
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