俺様彼氏と空手彼女





思わずそんな言葉が出る。



待ってるって、言ったじゃん。










「誰がバカだって?」




ふいに後ろから探していた人物の声がし、驚く私。



「わ、森崎…っ。帰ったんじゃ…」




「アホ、待ってるって言ったじゃねぇかよ」



言い方はいつもと同じ、すごく意地悪だったけど





表情は、悪魔の微笑みじゃなくて。





すごく、優しいものだった。






その笑顔に、柄にもなくキュンとしちゃったりして。







なんてことは死んでも言わないけれど。









「じゃ、帰ろうぜ。璃衣」




「うん…。」







「お、やけに素直だな?やっぱ、俺がいないと思って淋しかったのか?」



「っ!!」





聞かれてたー!!





よく考えれば、あいつ“誰がバカだって?”って言ってたんだから聞こえてたに決まってるよね…。

今さらだけど。















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