俺様彼氏と空手彼女
「嘘、だよ。そんなの…。葵はそんなヤツじゃない」
やっとつむぎだした言葉はひどく弱々しく、説得力に欠けるものだった。
次第に不安で包まれ、私の体は震え始める。
「嘘なんかじゃねぇよ。嘘だと思うんなら、自分の目で確かめろよ」
踵を返し、歩き始める隼人。
私も、黙ってその背中を追った。
行ってはいけない。
きっと後悔する。
二度と、後戻りできなくなる。
そんな言葉が、頭の中で何度もリピートされる。
だけど、足は止まらなかった。
隼人の言うことが嘘なんだと、確信が欲しかったからかもしれない。
あんなに、優しく笑ってくれるようになった葵の姿が偽りだなんて信じたくない。
いつの間にか、私の心は不安で一杯だった。