俺様彼氏と空手彼女
「くそっ!!」
なんてタイミングの悪いっ!!
今のを璃依に見られたんだとしたら、あの従兄には絶好のチャンスじゃねーのか!?
璃依が、あいつに奪られる。
そのことが頭の中を駆け回った瞬間、俺の体は動いていた。
璃依の、小さくなった背中を追い掛けようとした。
だが、
「待ってよ、葵くん」
この場の雰囲気にそぐわない冷静な声が、俺の気に障った。
だけど、無視するほうがいいに決まっている。
振り返りもせず、永井の話を聞き流す俺に再び永井は言葉を投げかける。
「璃依、葵くんより隼人くんを選ぶよ」
「っ!?」
「やっと反応してくれたね」
視界の外からそんな声とともに、くす、と聞こえた。
「ほら、おもしろいもの見せてあげる。」
そう言って差し出された手には、小型サイズのデジカメ。
そこに、大きく存在する画面には人が写り込んでいた。
永井の言葉が気になっていた俺は、意を決してそれを見てしまったんだ。