俺様彼氏と空手彼女
「森崎くん、璃依はまだ森崎くんが好きなんだよ。森崎に、もう一度璃依を好きになれとは言わない。ただ、あの子を助けてやってほしいの」
「璃依が…」
璃依が、まだ俺を想ってくれてる?
あの従兄じゃなくて?
じゃあ、あの従兄が言ったことはそういうことだったのか?
まだ、俺に望みはあると?
「俺の気持ちは変わらない」
「え…っ」
「俺が好きなのは、今も前も璃依だけだ。」
「森崎くん…」
まだ何か言いたげな相沢を残し、俺は屋上へと足をむけた。
ずっしりと重たい屋上のドアを開け、ひんやりとした朝の冷たい空気を肺へと送り込む。
秋も、すぐ終わる。
やがて、冬がくるだろう。
柵に歩み寄り、何となく下を見て見た。
生徒が、たくさん登校してきている。
もうじき、璃依もやってくるだろうな。
と、そのとき。
待っていた女の子が生徒玄関から飛び出し、グラウンドの方へ向かっているのが見えた。
「…璃依?」