俺様彼氏と空手彼女
「…よっ、と。」
重たい体育館倉庫の引き戸を開け、中を確認する。
薄暗くて埃っぽいそこには、葵の姿はなかった。
「葵…?」
外ぐつを脱いで、倉庫にあがる。
奥まで入ったとき。
「本当に来るなんて、思わなかったわ」
「…っ!?」
慌てて振り返れば、見たこともない女の子集団がいた。
冷たい笑みを浮かべ、何か考えていることは明白であった。
「どういうつもりっ!この手紙はアナタたちの仕業なの!?」
「そうよっ!森崎くんを裏切るからこらしめてやるのよ」
「ブスのくせに、調子に乗ってんじゃないわよ」
「あんたなんか死んじゃえばっ!?」
私に向けられた、冷たい視線と言葉。
いたたまれなくなって、視界がじんわりとにじむ。
でも、泣いちゃだめだ。
泣くものか。
泣きたいのを必死にこらえ、彼女たちを負けじと睨み付ける。
「いいわよ、アナタたち。この子、好きにしちゃって」