俺様彼氏と空手彼女
「この写真には、日付が付けてある。10月10日14時3分」
「だから何?」
「この時間、璃依は空手の試合を見に来ていたんだ。俺を、応援しに」
「!!」
葵がそう言った瞬間、周りからは冷たい視線が凜へと向けられた。
「だって、むかつくんだもの。これくらい、どうってこてないでしょ?璃依は強いもんね…?」
と、私に助けを請うように同意を求める凜。
「私は、強くなんかないよ。陰口とか、悪質な嫌がらせくらいなら耐えられる。だけど、男の人五人には立ち向かえない」
「…ぇ?」
私が、凜を真っ直ぐ見据えさっきのことを言えば凜は一気に青くなった。
「そ、そんなの私知らない…!嘘…、私はただ璃依の噂を…。まさかそんなことになるなんて…。私は悪くない…」
「…いい加減にして!!」
ぱちんっ
私の怒鳴り声の一瞬あと、教室内をこだまする軽い音。
凜の頬を打った手のひらはジンジンとした痛みを発している。
だから凜も、相当痛いに違いない。