俺様彼氏と空手彼女
そこ声があまりに冷たくて。異様な圧迫感すら感じた。
「ちょ…、葵」
それはやりすぎなんじゃない?と文句を言おうとすれば
ぎゅっ、と後ろから抱きすくめられ
「こいつの全てを感じていいのは、俺だけ」
耳元で甘い声を出され、かあっと顔が一気に火照る。
「ちょ…っ!離せ変態…っ」
慌てて引き剥がそうとするが、こいつは離れない。
それどころか、更に力を入れられた。
「わかった?」
声はひどく優しいものだが、後ろから伝わってくるのは殺気ばかり。
きっと、目は笑ってないに違いない。
「すっ、すいませんでした!」
ほとんどべそをかいて、優太は目をそらした。
こいつ、どういう脅し方だ…。
最近私は、手の付けられないようなヤンキーよりも葵の方がよっぽど恐ろしいのだと気付いた。
「バカ葵。恥ずかしくて死ぬ」
「そしたら人工呼吸してやるよ」
「…っ!アホかっ!!」
無駄だとわかっていても、私は葵に回し蹴りをお見舞いした。やっぱり当たることはなかったが。