俺様彼氏と空手彼女
さらにもう二人が一緒にかかってきた。
「…つまんねぇの」
「…じゃ、お大事に。」
道端に落ちたカバンを拾って軽く土埃を落として、俺は倒れた三人から目を逸らして再び歩きだした。
今日だけですでに八人。
高校に入学して一週間目の現在で、報復も含め三十人以上。
これが、普通の高校生の有様か?
「ただいま」
マンションの鍵を開け、見慣れた玄関に入る。
親はいない。
ここで兄貴である馨(カオル)と二人で暮らしている。
親父は普段、仕事の関係で海外で暮らしている。
おふくろは、俺が小せぇときに死んだ。
顔は、写真でしか見たことがない。あったとしても、覚えてない。
「おかえり」
ソファーの上で、脚を組んで雑誌を読んでいた馨。
俺はよく馨と似ていると言われる。
間違われることもしばしばだ。