1/5の罪と傷、6%の生きる糧
聡に出会ったのは、

サイパンのホテル求人を見つける前

まだ、桜の咲く少し前の事だった。

その日にはじめて彼とメンバーになり、

会社から車で式場に出向いて

披露宴のウェイトレスの仕事をこなす。

彼は、私の4つ年下で、

だけど年下だとは思えなかった。

優しい顔をして、丁寧に礼儀正しく

人と接する。

それが、聡が演じる聡で、

本当はとても大きな何かを

彼が抱えていると言う事は、

すぐに見抜いた。

見抜いて下さいと言わんばかりの

言動を取るから、容易だった。


私には、人も自分を俯瞰する癖がある。

これは元々私自身を何とかするための

防衛策。行きすぎた行動を取らないよう

自分で自分をコントロールするために、

馬鹿ながらに痛い経験を積んで

カラダで覚えてきたものだ。

只の、年の功かもしれない。

私は騙されやすい様でいて、

肝心な部分では騙されない。

そう自負している。


4歳年下の幼い彼が抱えている何かが

一体何なのかまだ検討がつかなくても、

『隙など他人には絶対に見せない』

そういう強い意志を持って人との距離を

上手に置く彼に

私はすごく興味を持った。
 
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