1/5の罪と傷、6%の生きる糧
帰国直前に、
もう一度病院の指示で診察を受けた。
殺した者は殺した者で
帰ってくるわけがないのだから、
今更自分の身体なんて
本当にどうでも良いと思ったし
むしろ去勢手術代わりに不妊症になって
一生子供ができない身体にでも
なればいいだろうと、
本当に失礼で愛のない事を考えたが、
今回の事で、
日本の医療の素晴らしさを再認識し、
二度とサイパンのあの病院だけには
行きたくもなかった。
「まぁ経過も大丈夫だと思います。本来ならもう一度来て欲しいのですが、今回のご事情は知っていますので、薬を多めに渡しておきますね。」
「はい。今回は、本当にご無理を言いました。ありがとうございました。最後に、一つだけお願いがあります。」
「どうしましたか?」
「あの、いまそのカルテにあるエコーの写真を、頂戴してもいいですか?」
「それはできませんね。」
「どうしてですか?」
「忘れるという事も、大切だからですよ。」
「どうしても、頂けないわけですね?」
「はい。渡す事はできません。」
「分かりました。お世話になりました。」
私は、忘れたくはなかった。
あの命は私に確実に何かを与えつづけた。
なのに、私に無惨に殺されたのだから。
不条理な死に方をさせたのは、
私だ。
彼と私の子供だったら、
それはもう間違いなく
どこかが変わった子供で
だけど絶対に可愛かっただろう。
夢見がちでも
馬鹿でも
ひねくれていても。
失った後では、
そんな事くらい、幾らでも思い描けた。
もう一度病院の指示で診察を受けた。
殺した者は殺した者で
帰ってくるわけがないのだから、
今更自分の身体なんて
本当にどうでも良いと思ったし
むしろ去勢手術代わりに不妊症になって
一生子供ができない身体にでも
なればいいだろうと、
本当に失礼で愛のない事を考えたが、
今回の事で、
日本の医療の素晴らしさを再認識し、
二度とサイパンのあの病院だけには
行きたくもなかった。
「まぁ経過も大丈夫だと思います。本来ならもう一度来て欲しいのですが、今回のご事情は知っていますので、薬を多めに渡しておきますね。」
「はい。今回は、本当にご無理を言いました。ありがとうございました。最後に、一つだけお願いがあります。」
「どうしましたか?」
「あの、いまそのカルテにあるエコーの写真を、頂戴してもいいですか?」
「それはできませんね。」
「どうしてですか?」
「忘れるという事も、大切だからですよ。」
「どうしても、頂けないわけですね?」
「はい。渡す事はできません。」
「分かりました。お世話になりました。」
私は、忘れたくはなかった。
あの命は私に確実に何かを与えつづけた。
なのに、私に無惨に殺されたのだから。
不条理な死に方をさせたのは、
私だ。
彼と私の子供だったら、
それはもう間違いなく
どこかが変わった子供で
だけど絶対に可愛かっただろう。
夢見がちでも
馬鹿でも
ひねくれていても。
失った後では、
そんな事くらい、幾らでも思い描けた。