1/5の罪と傷、6%の生きる糧
まさか、

まさかだけど、

聡は、私の事、好きだった?

私達には、本当は

中絶以外の方法があって、

あなたはもしかしたら、それを望んだ?

私が、自分の都合だけで、

サイパンに、居残っていた?


会社の玄関を開ける。

聡は会社に残っていて、

私は泥酔状態で、

他の社員さん達も私の泥酔状態に

驚いては居たけれど、

私は、見た目ほど

酔っぱらってもいなかった。

聡の目をちゃんと見て、

「私、どうしてもあなたから聞きたい事が、ある。」

というのが精一杯で、

聡は、

「分かりました。少し時間を下さい。」

そう言って、さっさと仕事を片づけて、

私と一緒に帰る事にした。



それまで私が、知らなかった事。

聡も私を好きでいてくれたこと。

彼は、私が初めてだったこと。

今も尚、彼女の1人も作っていない事。

まだ、私を好きでいてくれている事。


その日、私が見つけた事。

以前はそんな事は、なかったのに。

至近距離に近づくと、

顔にチックが出る、彼の癖。


すぐにでも泣けたけど、

私は泣かずに彼をとっさに抱きしめて

「分かったから。もうずっと近くにいるって、離さないって、絶対に約束するから。だから、お願い。ここであと1ヶ月、私を待っていて。」

そう言った。



バイクで家まで送ってもらう時、

腰を触って、

はじめて彼も相当痩せた事に気がついた。

「痩せたね。」

「志保さんも、痩せましたよね。」

お互い、

結構きつい生活だったんだなぁと

また改めて実感した。


翌日になって、

水子供養に1人で行った私は、

ここにあの命がいるという実感は

いまいち沸かなかったけれど、

「ここまで、私を導いてくれて、本当にありがとう。あなたの命だけは、何があっても絶対にもう無駄にはしません。」

そう墓前で誓った。


























< 75 / 93 >

この作品をシェア

pagetop