1/5の罪と傷、6%の生きる糧
だから、聡が

「中絶してください」

と私に頼んだ時は

本当に信じられなかった。

確かに私は今つわりもひどいし、

情緒不安定だけど、

でも何とかなるでしょう?

こんな事で、

壊れるような絆ではないでしょう?

私が、どれだけ食い下がっても

彼は絶対に譲らなかった。



何をしても絶対に駄目だと分かった時、

私が最終的に考えた事は、

「シングルマザーになれるのか、なれないか。」

私の答えは、NOだった。

今から思えば、私はあの時、

絶対にシングルマザーになるべきだった。

彼との子供を

産めば良かった。

私が、本当に後悔している事の1つだ。


意味が分からないと泣いていたけれど、

本当は、聡が

どうして私に中絶をして欲しかったか

その理由の意味するところを

私は知っていた。

他人から見れば下らない理由でも

聡という人間にとって、

幼少時から辛い思いをして

母親が大嫌いな聡にとって

「子供は、絶対的に幸せな環境で育てなければ駄目だ。志保は母親になる資格がない。」

そう言った聡の気持ちは、

自分の過去を投影したからで、

私にはそれが分かっていても

あの時も、

今も、

これからも、

1/5の6%の世界にいる私は、

殺した2つの命の為にも、

その理由を

飲み込む事は

もうできない。













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