うちの危険な大型犬
「で、玄関の前で待ってたって言ってたわよね、なんか用だったの?
来るんならうちの親にでも連絡先聞いて携帯にメールくれればよかったのに」
「うん、でも驚かせようと思って」
「だからってあんた、あんな時間まで外で待ってることないでしょうが。寒かったでしょう?」
「うん、でも佳奈ちゃんに会えると思ったら、全然平気だったよ」
「……は? 勉強のしすぎで脳みそのどこかいかれた?」
「ううん。至って正常。でね、用って言うのがね、昔の約束かなえてもらおうと思って」
「約束?」
そんなもんしたっけ? この子に会うのも県外の大学行く前以来だからなあ……。
「覚えてない?」
響が悲しそうな顔をして聞いてくる。
目がうるうるして、一昔流行ったチワワのCMみたいだ。外見は大型犬だけど。
うっ。思わず罪悪感が……。
「えーっと、昔のことだから忘れちゃったみたい。ごめんね~。どんな約束だったっけ?」
「――じゃあ、思い出させてあげる」
そう言って響は、私の両頬に手を添える。
そして顔がだんだんと近付いてきて……。
気が付いたら響と私の唇が重なっていた――――