鏡の彼
――少しは原因を探せ。

 本当は、どこかで分かっていたんだ。自分が馴染めないのはクラスの、みんなのせいじゃないって事。自分から馴染めないような壁を作ってしまっているんだ。だから、もうみんな知らんぷりしている。

 壁を壊さなきゃっていつも思う。だけど、いつもあと一歩で踏みとどまってしまうんだ。

 ホームルームでの中でも担任の教師がクラスの遅れを心配していた。

「選曲はどうするんだお前ら? 他のクラスはもうとっくに練習を始めているんだぞ」

 言われても、聞く耳なしのクラスメイト達。

 あげくの果てには……。

「別に、そんなもんなくってもカンケーないじゃん!」

 と、言う始末。

 どうしてだろ。どうしてそんな、無気力なんだろ。きっと私と同じなのかもしれない。形は違うけど、みんなやりたい事がないんだ、きっと。

 物があふれてる現代。欲しいと思えば、すぐになんでも手に入ってしまう。それが当たり前で、そこに何の疑問も持たなくなっていた。自然と努力して何か得よう、なんて気持ちは薄れている。でも、絆はお金では買えない。それだけは忘れてないよね?

「あ、あの……」

 私は思い切って席を立つ。
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