鏡の彼
「お前って変わってるよな」 

 突然、彼がそう切り出して私は困惑した。

「変わってるって何が?」

 それに、彼がため息を一つ漏らす。呆れた表情だ。私、何かまずい事言った……?

「つかさ、鏡の中に居る俺とは話ができんのになんで、学校では話ができねえんだよ?」

 ああ、と私は頷く。

「普通、鏡の中にいる奴と話す方がありえねえと思うぜ……」

「だって、あんたの方が話しやすいし」

 負けじと私も答えた。

「まあ、いいけどよ。学校に馴染めねえ、クラスに馴染めねえって言ってる暇あったら少しは自分から原因を探せよ」

 ……余計なお世話だよ。

 と、それは心の中に留めておいた。

 鏡の中には学校も何もない。社会に縛られる事も無いのかもしれない。

 けれど、彼はいつも一人。私のいる世界では少ないけれど、友人もいる。口うるさいけど先生や親もいる。

「……そろそろお母さん帰って来るから。また後でね」

 言って、私は彼に一先ず別れを告げた。

「おう。わかったよ……」
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