鏡の彼
 母にプリントを渡して記入をもらう。母に少しながら呆れられたが、私は今度こそ忘れないようにとしっかりと鞄にしまう。

 部屋に戻って私は今日の出来事を彼に報告した。顔は喜びに満ちていたかもしれない。

 そんな私の様子を彼も興味ありげに聞いていた。

「へえ……やるじゃん」

「でも、純子と秋本くんがいたからね」

「その秋本って奴にお前、惚れられたんじゃね?」

 え……!? とその時私に衝撃が走った。

 秋本くんが、まさか。女子の憧れの的なんだし、私なんか眼中にないって。うん、ありえない。

 それに、私が好きなのは……。

「冗談はよして。でも、一番はあんたのおかげだよ」

「まあ、俺のおかげだな!」

 と、彼は当然だ、とばかりに話す。

「でもさ、なんで私に親身になって話聞いてくれんの?」

 最初に聞くべきだった。その時は話し相手ができて喜んでたけれど、思えばこんなに真面目に聞いてくれる人もそういないんじゃ……。

 私が考えを巡らせると彼はこう言ってきた。

「――お前が俺で、俺がお前だからさ」
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