鏡の彼
 会場は静かだった。拍手も起こらなかった。そう、親達も泣いていたのだった。しばらくすすり泣く声が聞こえていた。

 そして、落ち着いた頃。ようやく拍手が巻き起こった。立ったまま、男の人の「ブラボー!」の声が聞こえた。「素晴らしい!!」との声も耳に入った。

 熱気が冷めぬ内に降ろされた幕は、みんなに「思い切り泣きなさい」と言ってくれた気がした。
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