鏡の彼
 ステージに立たされ、私達はスポットライトを存分に浴びせられた。白色の照明がやけにまぶしい。目が慣れていないせいだろう。


(でも、なんでみんなをステージに……?)


 疑問も尽きないまま、校長はみんなの脇に手を広げた。


「最優秀賞!! 一年三組!!」


 ……へ?

 先生を筆頭にみんなも困惑していた。反応の遅い私は、先生に肩を叩かれるまで情況を理解できずにいた。


「こらっ! 渡辺! ぼけっとするな!!」
 は、はい!? なにが起こったんですか!?


「ちょ、この子固まってるし。はやく、ピアノ、ピアノ! アンコールよ!!」
 体が硬直した私を純子が肘でつついた。


「渡辺ー!!」


 今度は、秋本くん。すでに指揮棒を手にしては、段上にいる。
 私は、はっとして席に着いた。急いでピアノの上へと指を置き、旋律を引き出す。
 せっかくの晴れ舞台、行っちゃいますか……!
 イントロを刻み、アンコールは始まった。
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