鏡の彼
 後日、合唱コンクールの裏話が聞こえてきた。私達が獲得した最優秀賞。これは、校長が密かに用意したものだった。そのせいか、審査の時間は思いのほか長引いていたらしい。

 賞状はすぐにでも刷るのが可能だったが、トロフィーだけは間に合わずに、結局私達のクラスにトロフィーが来たのは最近。

 しかも、授業中にだというからおかしな話だ。

 合唱コンクールを終えて、変わった事が幾つかある。

 あの日以来、私には新しい友達が増え、秋本くんとも頻繁に会話している。そんな様子を純子がひやかしに来るのは日常茶飯事で、乗じて女子達もひやかし半分、嫉妬半分で二人の様子を探っていた。

 私は、というと秋本くんには良い友達として接している。『彼』を想う以上私の心は変わらない。今日もクラスの女子に秋本くんの好みを聞かれては、お手上げであった。
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