鏡の彼
「辛いのは君だけじゃない、悲しいのは君だけじゃない……」
とある音楽番組。懐メロ特集では私達のクラスで歌った曲が流れていた。
「へえ、俺達が歌ったやつじゃん。これ」
隣にいた彼が言った。私は大人になり、結婚した。
「あの時は大変だったよ……。あなた、私のピアノで泣くんだもの」
「あはは……。もう忘れろよ」
照れる彼。そう、秋本くん。彼は私の夫なった。『鏡の彼』を忘れられない私は最初、秋本くんに壁を作っていた。だが、その壁を恐れずゆっくりと優しく壊す秋本くんに私も次第に惹かれていた。そして、三年前に入籍。
今ではお腹も大きくなり、妊婦となった。
私は母と同居し、秋本くんもそれに快諾してくれた。母は生まれてくる孫の顔が早く見たいと服やら玩具やらのカタログを抱え込んでいる。幸せな家庭がそこにはあった。
とある音楽番組。懐メロ特集では私達のクラスで歌った曲が流れていた。
「へえ、俺達が歌ったやつじゃん。これ」
隣にいた彼が言った。私は大人になり、結婚した。
「あの時は大変だったよ……。あなた、私のピアノで泣くんだもの」
「あはは……。もう忘れろよ」
照れる彼。そう、秋本くん。彼は私の夫なった。『鏡の彼』を忘れられない私は最初、秋本くんに壁を作っていた。だが、その壁を恐れずゆっくりと優しく壊す秋本くんに私も次第に惹かれていた。そして、三年前に入籍。
今ではお腹も大きくなり、妊婦となった。
私は母と同居し、秋本くんもそれに快諾してくれた。母は生まれてくる孫の顔が早く見たいと服やら玩具やらのカタログを抱え込んでいる。幸せな家庭がそこにはあった。