鏡の彼
第三話 選曲
 今、私の学校ではちょっとした問題が起こっていた。それは、来月に迫る合唱コンクールだ。

 やる気のあるクラスでは選曲がとうに決まり、猛練習に励んでいる。しかし、私のいるクラスはそんな事はお構いなし。高校生にもなって、と練習の時間にサボる生徒もいる。

 そんな訳あってか、私のクラスでは未だに選曲すら決まっていない。

「……おはよ」

「あ、おはよー」

 友人の一人と言葉をかわす私。彼女は優しいし、私の数少ない味方でもある。

 彼女はすぐさま、合唱コンクールの話題を持ち出してきた。中学の頃の合唱コンクールでは、私と彼女のクラスが優秀賞を獲得したから。

「今度の合唱コンクールさあ、ピアノやらないの?」

 屈託のない笑みで、彼女は聞いてくる。

(そんなもの、今は誰も聞いてくれないよ)

 あの時は、たまたまみんなが団結したからできただけ。今はみんなバラバラで、私の話なんか聞いてくれないよ。

(そもそも、私はクラスに馴染めてないんだから……)

 そう思う私の背後で彼の声は響く。
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