オトナ彼氏∞
「…条件?」
「俺が勝ったら、結花は俺がもらいます」
信は視線をそらすことなく正樹さんを睨み続けていた
こんな信は見たことがなくて、私はただ見守ることしかできなかった
少し震え出した肩をりっちゃんが優しく撫でてくれる
「…それは困るな。まだ何も始まってないのに」
「だったら正樹さんが得意なものにしてくださいよ。でも、絶対に俺が勝ちます」
信がこんなにも私を思ってくれてたなんて…
全然わからなかった
『しばらくは素直に応援できない』
そう言ってた意味がようやくわかった気がした
「随分余裕だな…。」
「これ以上大事なものなくしたくないですから」
正樹さんはニヤリと笑い、側にいた私の腕を引っ張った
もちろん私はよろけて正樹さんの胸に飛び込む形になった
「きゃっ!」
「俺だってなくしたくないさ。大事な子だからね」
正樹さんは固まる私の髪に唇を落とすと、そのままぐっと私を抱き寄せた
私は正樹さんの胸に顔を押し付けたまま気絶しそうになった
「…っ!」
「こんな可愛い結花は、例え信君にでもやらないよ」
「だったら正々堂々と戦ってくれよ!」
信は痺れを切らしたように叫んだ
「…なら、100Mで勝負だ」
頭の上で正樹さんが少し笑った気がした