キスより甘く囁いて
第一章
おさななじみ
パシン、と、乾いた音が部屋に響く。
目の前には、涙目の女が立っていて、その瞳は俺をしっかりと睨んでいる。
…ああ、また同じだった。
このパターンは何回か見た。
俺が右ほっぺにビンタを食らって、女が泣いて怒って出て行くパターン。
だから驚かない。
「凛の馬鹿! もう私達別れよう!」
「…分かった」
「……引き止めもしないんだね」
なんで引き止めなきゃいけねぇんだよ。
「別れよう」、って言いだしたのはそっちじゃねぇか。