ティー・カップ
ティー・カップ
恋をしているとき、相手の顔を思い浮かべることはたやすい。

目を閉じれば瞳の色や大きさから、髪の生え際に至るまで鮮明にその顔が浮かび上がってくる。

しかしその恋を失った途端、その行為は海に落とした涙を探すくらい難しいものとなってくる。

ほかの人はどうなのか分からないが、少なくとも僕の場合はそうだ。

相手に対する愛が大きければ大きいほど、深ければ深いほどその顔を思い出すことが困難になる。

付き合っている頃は簡単に浮かんだ顔も、別れた5分後にはもう思い出せなくなっている。

何とか輪郭と髪型は思い出せても、目や鼻はまったく思い出せない。

目が２つだったかどうかさえ疑わしく思えてくる。


しかしそんな混乱に陥っても、ふとしたことですべてを思い出すことがある。



たとえばそれはティー・カップがきっかけだったりする。




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