ティー・カップ
エマと別れてから僅か1ヵ月後の日曜日の午後、僕たちはお互い一人で買い物に来ていたスーパーマーケットで偶然再会した。


「マークじゃない?」


最初に気付いたエマが僕に声を掛けた。

同じ街に住んでいるのだから、当然また会うこともあるかもしれないとは思っていたが、どうせ会うのだったらもっとまともな場所で、もっとまともな格好のときに会いたかった。

僕はそのときくたびれたスウェットに汚れたスニーカーの踵を踏み潰して履いていて、買い物かごの中にはトイレット・ペーパーや洗剤なんかが入っていた。

一方エマの方はといえば、カジュアルだが綺麗に着飾っていて、買い物かごの中にはぎっしりと食料品が詰まっていた。

その中には僕とよく一緒に食べたピザとガーリック・ブレッドも見つけることができた。

きっと新しい男とも一緒に食べているのだろう。
 
僕たちはそこで二言、三言、言葉を交わしたのだが、何を話したのかはよく覚えていない。


「それじゃあ、また」
 

最後にそう言ったことだけは覚えている。


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