with you
「依田先輩は人気あったもんね。彼女になろうって人はなかなかいなかったけど」


 そう話に割り込んできたのは渡部藍子だった。彼女は愛理と同じ中学出身だった。


「どうして?」


 真由は不思議そうに聞いていた。


「だって、彼女になるなんて無理だろうし。それに男としての魅力も感じないっていうか、遠くから見ているだけで満足って思っている人が多かったみたい。好きな人とかっこいいと思う人は別というか」


 愛理は苦笑いを浮かべていた。



「そんなにお兄ちゃんはかっこいいかな。並だと思うんだけど」


「あれが並なわけないって」


 彼女はそんなことを言うと、私たちのそばを抜け、そのまま教室を出て行った。たまたま通りかかったんだろう。


 見ているだけで満足、か。


 そういう気持ちは分からなくはない。


 あんな人と自分が一緒にいるイメージがわかない気がする。


 画面越しに見るように、特別な感じがするから。


「お兄ちゃんも彼女できたこともないからね。ごくたまに告白されても断っているし」


 その話は少し意外だった。



 美由紀は恋人ができないといけないみたいに言っていたけど、そういう人もいるんだ。


 ならやっぱり私も恋人なんて作る必要なんてないような気がしたのだ。

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