with you
 少しクセのある黒髪の女の子だ。でも、目が大きくてすごくかわいい子。話をしたわけでもないのに、すごくやわらかい雰囲気が漂っていた。


 そう思ったとき、彼女と目が合う。


 私はどう声をかけていいのかわからずに、思わず顔をそらしてしまっていた。


 椅子に座る。でも、目があったんだから、挨拶くらいはしてもいいのかな。


 迷惑じゃないよね。


 私は小さく深呼吸をすると、こぶしで胸を軽くたたいた。


 友達関係に自信があるほうではなかった。でも、立ち止まっているばかりでは前に進めないのは分かっていた。


 現にこの高校には私の友達は誰一人として来ていないのだ。


 そして、振り返ると、さっきの子が私をじっと見ていた。


 挨拶をせずに目をそらしてしまって、変な風に思っているのかもしれない。


 まずはこんにちはじゃなくて、はじめましてだ。


 そこまで考えて、顔が赤くなるのを感じながら、ゆっくりと話しかける。


「初めまして。私、前原咲と言います」


 彼女は一瞬、目を見張る。そのことに戸惑っていたけど、すぐに目を細めてくれた。


「私は安岡真由といいます」


 彼女が反応してくれたことがうれしかったけど、顔が思わずにやけそうになっているのに気づき、彼女に背を向けた。挨拶はしたから、大丈夫かな。大丈夫だよね。言い聞かせるようにそう思っていた。


 でも、真由ちゃんか。名前もすごく可愛いな。


 あいている席がうまっていき、最後に先生が入ってくる。それから簡単な説明と入学式が始まった。

< 2 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop