with you
「え、あの」


 どう反応していいのかわからなかったのだ。


 つきあうってことに興味はあった。でも、最初に付き合うのは自分の好きだと思える人がいい。 そんな人がこの先現れるかわからないけど。


 そう考えると決意は固まる。


 そう伝えようと彼を見たが、その言葉が出てこなかった。


 彼はさっきと変わらない笑顔を浮かべていた。



 どう断ればいいんだろう。


 できるだけ彼を傷つけたくなかった。でも、適切な言葉も思いつかず、何も言えずに顔をそむけてしまっていた。


「ダメなら、試しにつきあって。一か月くらいさ」


 思いもよらない言葉に顔をあげる。


「俺のこと知らないうちに断れても困るし」


 彼はそういうと、距離を詰めてきた。


「ごめんなさい。あの」


 一方的に近づいてくる彼が怖くて、後ずさりする。でも、すぐに体に硬いものが当たる。それは近くの家の壁。
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