with you
「俺って結構もてるんだけどな。きっと君ならつりあうと思うよ」


 彼の手が私の手をひねるようにつかんだ。即座に鳥肌が立つのが分かった。


 どうしたら帰してくれるんだろう。


 つきあうという返事をするまでかえしてくれないんだろうか。


 別の道を通らなかったことを心の中で後悔したとき、聞いたことある声が耳に届いていた。


「新井。お前、何やっているんだよ」


「依田先輩?」


 彼の声と同時に私もその声がした方向を見ていた。



 そこには茶色の髪の毛をした男の人の姿があった。


 その顔立ちは一目で人の目をひきつけるが、そのときの彼の目は普段見せないような鋭い光を放っていた。


「何って」


 彼がチラッと私を見る。


「何を言いたいかといえば、断られているんだから素直に諦めろよってこと」



 鋭い目に、落ち着いた話し方は妙な威圧感を与える。


「別にまだ断られてはいませんから」


「本気でそう思っているわけ? そうやって無理に手首までつかんで。妹の友達に手荒なことしないんでほしいんだけど」
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