with you
 新井さんは不満そうに私を見ていた。


「分かりました」


 彼はそう言うと、わざとらしくため息を吐いてその場を去っていく。


 一瞬、去っていこうとした彼が体をびくつかせる。そこには西原先輩の姿があった。


 依田先輩の家に行くと言っていたから、その途中だったのかもしれない。


 私は気が抜け、壁にもたれかかっていた。ほっと胸を撫で下ろす。


「大丈夫?」


「あ、はい。すみません」


 私が動こうとすると、彼が手で制した。


 そして、笑顔を浮べる。


 正直、どう反応していいかわからない。


 それは初対面のときからそうだった。


「無理に動かなくていいよ。動けるようになるまで待つから」


 私はその言葉にうなずく。


「でも、先輩は西原先輩と用事があったんじゃ」


「いいよ。今は君のほうが大事だから」
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