with you
 意表をつく言葉に目を見張り、彼を見る。


 一方の彼は首をかしげ、子供のような笑顔を浮かべている。


 彼はこういった人なんだと感じていた。


 打算をしているわけでも、相手に媚を売ろうとしているわけでもなく、素直に自分の気持ちを伝えることのできる人。


 こういうお兄さんがほしかったと兄がいないのに思わせる。居心地のない心がすっと収まるような安心感を与えてくれた。


 愛理がお兄さんと親しい気持ちが分かる気がした。


 交差点を渡り、人通りの多い道を歩いていく。脇に車や自転車を乗った人がかけていく。


 だが、彼に安堵感を覚えているはずなのに話しかけることができないでいた。


「咲?」


 不意打ちのように聞こえてきた言葉に顔をあげると、髪の毛を肩の下まで伸ばした女の子が目を見張り私を見つめていたのだ。


 彼女の名前は平田美由紀といい、私の中学の同級生だった。

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