with you
「ごめんね。俺、そういうことに全く興味がないんだ」


「興味がないなんて嘘ばっかり」


　彼女は依田先輩の腕をつかもうと手を伸ばしていたが、彼はすっとそれを交わす。


　彼女が先輩に詰め寄ろうとしたのを見て、今の状況を回避するために必死で考える。


「私はここでかまいません。ありがとうございました」


「家に帰ったらメールして」


　彼は私の言葉の意味を汲み取ったのか、深々と頭を下げると足早に背を向けて帰っていく。


「せっかくチャンスだったのに邪魔しないでよ」


　美由紀は頬を膨らませ、私をにらんで来た。


「ごめんね」



　私は言い訳をせずに素直に詫びた。彼女にはこうするのが一番だと中学校の経験から分かっていたからだ。


　彼女は私の目をじっと見る。人の目を見て話すのが当たり前だと言われるが彼女の動作は少し違う。


　まるで心の中のあら捜しでもしようというかのように眉をひそめる瞬間さえも見逃さないようにじっと見つめる。


　私は顔を逸らすと、あいまいに微笑んだ。


「あの人のことが好きなの？　それなら手出ししないけど」


　好きと言われてもしっくりこなかった。ただ、彼に迷惑をかけたくなかったのだ。


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